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TITLE: 太陽・墜落する若者・天の父

CATEGORY: 神話雑記 DATE: 02/03/2016 00:45:40


「おひさまをほしがったハヌマン」という
インドの大画家ラマ・チャンドランの絵本がある。

昔、インドの風神ワーユの息子ハヌマン(猿の姿)が、
キラキラ輝く太陽をつかまえようと追いかけた。
それを見とがめた雷神インドラが、稲妻を投げつけたので、
ハヌマンは死んでしまった。
息子の死を嘆き悲しんだ風神ワーユが姿をかくし、
世界の風は止まり、動植物はすべて活動を止めてしまう。
「しまった!」と思った雷神インドラは、
地底で悲しみに沈む風神ワーユを探し出し、
息子ハヌマンをよみがえらせることを約束し、
「この子は、やがて立派な神になる」と告げたので、
喜んだ風神ワーユは再び地上に戻り、
すべての生き物もよみがえった。

およそこんな内容の絵本だった。
ギリシア神話のデメテルとペルセフォネーや、
日本神話のアマテラスとスサノオの物語に、
どこか似ている。

ネットで調べると、
「ハヌマンは美味しい木の実だと思って太陽を求めた」
という説話もあるようだ。


古代中東のナツメヤシにまつわる豊穣儀礼について、
高所の収穫や授粉作業が大変なため命を落とす作業者もいて、
「大地の女神への犠牲」という象徴儀礼の下地になったのでは?
という疑問を抱いているのだが、
まるで私のその疑問に答えるかのように、
インドの猿神ハヌマンは、
太陽(木の実)をとろうとして墜落死し、
のちによみがえっている。

ハヌマンは、「ラーマーヤナ」で大活躍する英雄だ。
猿の英雄といえば、中国の道教の神「斉天大聖・孫悟空」もいる。
アジアの絵本などをみると「猿の民話」は多く、
猿が英雄やトリックスターとして活躍している。
日本では、神話の猿田彦、サルカニ合戦の猿、などだろうか。
ちなみにサルカニ合戦の類話はアジア圏にいくつもあり、


カニ・カメ・カエルなどライバルは変化するが、
「木の実をめぐり、猿にとって残念な結末」という点では一致しているという。
そういえば西遊記の孫悟空は、「不老不死の桃の実」を盗み、
天界に反逆して幽閉されるが、やがて英雄として再生する。

そして、木の実というモチーフ以外に注目したいのが、
「猿=太陽神」としての側面を持つ場合もあることだ。


アジアでは、鳥や猿は天からの使いとされ、
猩々(ショウジョウ)という「猿に似た伝説上の生き物」が描かれてきた。

インド神話では、ハヌマンは太陽を追いかける。
日本の「猿神」は、「日吉神」とも呼ばれている。

ヒエガミ、またはヒヨシガミ。太陽の使いの神、だそうだ。
日光東照宮には、「三匹の猿」の像がある。
豊臣秀吉は、幼名が日吉丸、サルと呼ばれたという。
猿と太陽と王のイメージが結びついている。

一転して、ヨーロッパには野生の猿がいない。
猿が生息するための、果樹の豊富な森林がないからだ。
実をとろうとして樹から落ちる猿神もいない。
ギリシア神話の墜落する若者といえば、
イカロスとパエトーンが思い浮かぶ。

名工ダイダロスの息子イカロスは
地中海クレタ島での幽閉生活から逃れるため、
父とともに、
蝋で固めた鳥の羽根の翼で空を飛んだが、
太陽に近づきすぎて翼が燃え、海に墜落して命を落としたという。

少年パエトーンは、太陽神の父から借りた
太陽の戦車を乗りこなすことが出来ず、
天を暴走したために、雷神ゼウスの投げた稲妻によって、
地上に墜落し、命を落としたという。

命を落とす者が「偉大な父の息子」であり、
若くして天空を上昇すること、そして
命を落とす原因が、太陽・炎や稲妻そして墜落であることが、
インドのハヌマンとも共通している。

ナツメヤシの学名Phoenix dactyliferaには、
地中海沿岸の古代都市フェニキアにちなみ、
「フェニックス」の語が含まれる。

なぜナツメヤシが不死鳥フェニックスと結びつくかというと、
赤紫の実の色が、古くからとても貴重な染料だった貝紫の
ロイヤルパープルとよく似ていたからだという。
貝紫は、地中海沿岸のフェニキアが産地だった。

イカロスが幽閉されたクレタ島も地中海にあり、
ナツメヤシや貝紫の産地だった。

朝焼け夕焼けの空や海を思わせる「貝染めの赤紫の布」は、
やがて皇帝色とも呼ばれ、
一部のごく高貴な身分の人々に独占されていく貴重品だった。

太陽が沈み、また昇るように、
フェニックスは寿命が尽きると炎で身を焼き、
その炎の中から、新たな翼で生まれてくるという。

日没と日の出の「空の色」。
その赤紫の輝きを宿した実が、
「フェニックス」という
ナツメヤシの学名へとつながった。

フェニックスは、アジアでは鳳凰と呼ばれる。
猿と鳥とは、天の太陽の使者。
フェニックス(鳥)は、赤紫の染料と結びつく。
猩々(猿)もまた同様に、赤紫と結びつく。

「猩々緋」というのは、赤紫色のことである。
日本の猩々は、酒を持って海からくる精霊らしいが、
何千年もの昔からナツメヤシの実は酒の原料であり、
古来より地中海は交易が盛んであった。
猩々のイメージの源流は、どこからきたのか、遠い幻想に誘われる。


天をめざし、地に落ちて命を失い、
ふたたび再生するフェニックスやハヌマン。
その姿は、太陽の運行のように力強い。
地中海をはさんで西と東とで物語の違いはあるが、
樹高が高く、収穫や授粉作業に危険が伴うという、
特殊な条件を持つナツメヤシの実をめぐる古い豊穣儀礼が
長い時をかけて各地に伝播しながら、
輝く生命のイメージを織りあげていった過程ではなかろうか。

嘆きの風の声をあげる天空の父や、
憧れて指を伸ばす先の太陽や、
墜落の瞬間の稲妻や、
冥界からよみがえる若者の物語を、
何千年もかけて人々は伝え続けてきた。
海を越え、砂漠を越え、時を越え。
たぶん何よりも伝えたかったはずの、
美しい残照と曙光、その光の織り糸によって。






 

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