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こちら、ドワーフ・プラネット ( Yahoo!ブログより )
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月曜から日曜まで、『日常』は、太陽系の7惑星。
そのはざまに浮かぶ、『矮惑星』のような、
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MONTHLY: 2015/02
TITLE: 天の河 (2)
CATEGORY: 創作「オモカゲ山のシノブくん」
DATE: 02/28/2015 12:02:08
「いってこい」 アズマさんがそういって羽ウチワをひとふりすると、風がおきた。 わたしはシノブくんと手をつなぎ、カラスガサキから風にのって、ふわりふわり。 緑のおわんをこんもり三つふせたような、オモカゲ山。 そのおわんのふもと、オモカゲ街をとりまくのはオモカゲ川。かがやく蛇のように、ゆうゆうと空をうつしてうねる。 ひろがる空、山と川。 やがて景色は、林のような建物、せわしない人の流れの底にしずみ、シノブくんとわたしは、ゆっくりと影をおとし、地上におり立った。 大通りにたくさんの屋台がならび、並木の列にすずしげな飾りつけがゆれている。くす玉につるされた吹き流し、色とりどりの紙を結んだ笹の大枝...... みとれていると、シノブくんが指さした。 「七夕といって、夏の星まつりなんだよ。ねがいごとを書いた短冊を、ああして笹の枝にかざるんだね」 頭上の吹き流しや笹の葉が、風にサラサラと鳴る。 ユカタ姿の人々がたのしげに行きかう。 あまいワタアメのにおいがただよってきた。
「おや、あれはいつかのサツキさん、かな?」 シノブくんが、首をかしげた。 にぎわう人ごみの中、黄色い花もよう・あいぞめのユカタ姿が目をひいた。 あぁ、あれは...... カガミ石を麦の穂でこすり、涙をうかべていた......あのときのきれいな横顔に、今はほほえみをうかべて、サツキさんが前を歩いていく。 サツキさんとならんで歩く、背の高い男の人。 サツキさんが話しかけると、うんうんとうなずく横顔がとてもやさしい......サツキさんは幸せそうだった。 「よかったね......」 シノブくんが、ちいさな声で言った。
「あれ、この短冊を書いたのは、あのときの......」 シノブくんが、たくさんある笹かざりのひとつに近より、びっしりつるされた細長い紙の中から、一枚を手にとった。 さくら色の紙に、おさない字がくっきり。ていねいに記された、ねがいごと。 「 お花やさんに、なれますように。みなこ 」 シノブくんが、にっこりして読みあげた。 みなこ...... わたしは、シノブくんの手元をのぞきこんだ。 「黒沼で泣いていた、ミナコちゃん?」 シノブくんは、うなずいた。 「たぶん......この笹は、あのとき遠足にきていた小学校の1年生たちが、かざったものかな」 「どうしてわかるの? こんなにたくさんの笹かざりの中から」 さっきもシノブくんは、人ごみの中からサツキさんの姿を見つけていた......いともかんたんに。 ふしぎに思ってたずねると、シノブくんは、いっそうにっこりした。 「どうしてかな......御縁、かな。きっと」
七夕かざりの並木をそぞろ歩く人のむれから、歓声があがった。 白装束の男たちが、大きな大きなワラジをかつぎ、いせいよく大通りをすすんでいく。 うちならすタイコやカネの音とともに、大ワラジは、午後のオモカゲ街をねり歩く。そうして夕方には、オモカゲ川までいくという。 わきおこる入道雲がいつしか雷雲にかわり、しめった風がザワザワと笹かざりをたなびかせた。
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