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のんびり書き記したブログのアーカイブです。

 

月曜から日曜まで、『日常』は、太陽系の7惑星。

そのはざまに浮かぶ、『矮惑星』のような、

夢見がちな時間の記録として。

 

 

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MONTHLY: 2010/10

 

 

TITLE: (考察)イナズマイレブン・吹雪士郎くん(その5)

CATEGORY: (考察) 吹雪士郎くん DATE: 10/30/2010 00:00:00

(アニメ『脅威の侵略者編』を中心にして)
・・聞こえる、ボールから、みんなの声が・・

「氷のストライカー」吹雪士郎に、「涙は禁物」?
キャラの演出上、クールさが売り、ですから・・・

第59話で、豪炎寺に思いっきり突き放された、吹雪くん。
まるで吹雪くんの代わりに、雨雲や雷鳴が叫んでいるような、
胸の痛む場面でした。
でもそれに続く、描かれていない情景として、雷雨に打たれ
ひとり涙を流す吹雪くんの像が、私の目に、浮かんでは消え・・・
豪炎寺が背を向け、立ち去ったのも、そっとしておく優しさだった、
と思われてなりません。

吹雪くんには、とても必要だった、
偽らない感情を吐き出す時間、静かに自分を見つめる時間が・・・
イナズマキャラバンは、吹雪くんに、その時間を与えました。
ただひたすら、仲間として・・・

第61話、ベンチで、苦戦する仲間を見つめる吹雪くんは、もはや
血気にはやるアツヤでも、微笑んでチームを鼓舞する士郎でもなく。
雪崩事故を凝視したまま、凍てついた、あの幼い瞳で
・・・暗闇にうずくまる少年の瞳で、世界を見つめていました。
吹雪くんには、時の流れが止まってしまった、この暗闇からしか
踏みだすべき、どんな一歩も見つからなかったのです。

無力さの極みにいるようですが、このとき、
方位磁針の針が、ぴたりと静止して、現在地を示すように
吹雪くんは、本当のスタート地点に立っていた、と私は思います。
無力さを知りながら、闇の中でも立った・・・その姿勢こそ
彼自身も知らずにいた、吹雪くんの本当の強さなのだ、と。
「監督、ぼくを試合に出してください。
 ぼくは、みんなの役に立ちたいんです」

「こい、お前の答えは、グラウンドでしか見つからない」(豪炎寺)
「・・・大丈夫さ、あいつなら。吹雪は、自分で決めて
  グラウンドに戻ってきた。オレ達にできることは、
 あいつにボールをつなげることだ」(円堂守)

仲間のまなざしに包まれて、吹雪くんは、プレーに戻りました。
けれど、DFもFWも完璧にこなし、チームに役立とうとする、
あの強いこだわりに、まだ縛られたままです。
「ぼくは、この試合で完璧になる。
 みんなのためにも、ならなくちゃならないんだ」
吹雪くんが「ならなくちゃならない」と、ガンジガラメのときは、
失敗するのが常・・・そして、やっぱり。
「ぼくのプレーが全然通用しない。完璧にならなきゃいけないのに」

偽らない現在地(闇にうずくまる少年)を示した、方位磁針の針は、
とても感じやすく、未来にも過去にも、ゆれ動きます。
完璧になれない自分を責め、とめどなく落ち込む吹雪くん・・・
仲間がつないだパスを受け止められず、立ち尽くします。

試合中の情けない顔も、ワンマンプレーに走っていた頃を思えば、
なんだか可愛いな~(不謹慎) けれども
豪炎寺は、許しませんでした。場外に転がったボールを
思いっきり、吹雪くんのお腹に蹴り込みます。
これは・・・痛い。
くの字の体勢で、ボールとともにぶっ飛ばされた吹雪くん、
情けなさも、クライマックスです。

「豪炎寺くん・・・」
「本気のプレーで失敗するならいい。だが、
 やる気のないプレーだけは、絶対に許さない。
 お前には、聞こえないのか、あの声が」
「声? 声なんて・・・」
試合再開、豪炎寺にうながされて目で追った、ボールの行方。
体を張って、ひとつのボールを奪い合い、パスをつなぐ・・・
スピードを追求していた頃の吹雪くんには、見えず聞こえなかった
仲間たちの息使い。
闘っていたのは、吹雪くんだけでは、ありませんでした。

吹雪くんが、みんなの役に立ち、助けたかったように、
みんなも、吹雪くんを心配し、助けになりたいと願っていたのです。
キャプテン円堂からの渾身のパスが、
吹雪くんの、胸に届きました。円堂の信念は
「オレは、みんなを信じている。言葉でわからないなら、
 プレーで伝えるしかない」

「聞こえる、ボールから、みんなの声が・・・」
チームから届けられたボールは、
吹雪くんの心の扉を開ける、光そのものでした。
暗闇に差し込む、金色の春の陽光にも似た・・・
「みんなの想いが込められたボール・・・みんなの」
吹雪くんは、肌身はなさず身につけていたマフラーを、はずします。
試合中でも、南国でも、いつも首に巻いていた白いマフラーは、
弟アツヤの形見でした。

「そういうことだったんだね、父さん・・・
 完璧になるっていうのは、ぼくがアツヤになることじゃない。
 仲間と一緒に闘うこと、ひとつになることなんだ」
「そうだ、兄貴は、もうひとりじゃない」
アツヤの声が、耳に響きます。
試合のさなか、吹雪くんは微笑みます。蹴り上げたボールと一緒に
軽々と跳躍し・・・そして
アツヤの想いとともに、吹雪くんが、再び地に足を着けたとき、
その足元にはサッカーボール、瞳にはゴールを目指す強い輝きが
ありました・・・

方位磁針は、未来を指しました。
蹴り上げられたボールのように、どこまでも真っ直ぐ。



 

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TITLE: (考察)イナズマイレブン・吹雪士郎くん(その4)

CATEGORY: (考察) 吹雪士郎くん DATE: 10/27/2010 14:53:36

・・・サッカーボールが結んだ絆・・・

「蛇の道は蛇」ということわざがありますが、
悩んでいる吹雪くんを客観的に理解し、励ましたのは、
彼と同じ、素質と能力を持つFW選手達でした。

「昨日の敵は、今日の友」的に登場し、
イナズマキャラバンの危機を救った「アフロディ(通称)」は、
味方チームに活路を開くため、相手方の猛攻を一身に受け、
ひどいダメージから入院します。けれど見舞った円堂守に対し、
アフロディは、自己犠牲的な感傷にひたることもなく、
超然とした笑顔で「ぼくも、まだまだだね」と、言ってのけます。

自分にしか出来ない、自分なら出来るかもしれない・・・
ならば、チームの勝利のために、傷ついても試みるだけだ・・・

何度失敗し、泥にまみれても(美しい容姿とは裏腹に)
タフな闘志を失わず、他者の敵意・無理解とて意に介しません。
このアフロディの姿勢を支えるのは、高いプライドと実力です。
吹雪くんは、病院にアフロディを訪ねて、たった一言
「すごいね、君」

無力感の底にいる吹雪くんに対して、
アフロディは、プレーヤーとして無言のエールを送り
それは、憧れとともに、吹雪くんの胸に眠る
「借り物ではない自尊心」を、呼び覚ますのにも充分な
熱いメッセージとなりました。

それでも、ふっきれない吹雪くん・・・
決定的に揺さぶった「熱い存在」は、やはり
豪炎寺修也、という快男児だったのでしょうか。

豪炎寺は、イナズマキャラバンのFWで、本来なら
彼がエースストライカー。ところが、病弱な妹を
敵方の思惑から守るため、やむなく沖縄に潜伏・・・
豪炎寺の消息を追い、沖縄に遠征したチームの前に、
(吹雪くんが力尽きて試合から退いた直後に)守護神のごとく現れ、
エースストライカーとして復帰します。

長らく意識不明だった妹(乙女の冥界下り)
妹の目覚めと、身の安全の保障(姫の救出)
沖縄への潜伏と修業、悪人の捜査・逮捕劇(漂泊・試練の旅)
圧倒的なシュートで勝利(竜退治・英雄誕生)

豪炎寺修也という少年には、「英雄の物語」が埋め込まれています。
吹雪くんが「死と再生の双児神(文化英雄)」の相を持つのに対し、
豪炎寺の場合は、「姫の救出・竜退治」など英雄物語の王道を行く。

医者の息子で、母は幼い頃に他界したという豪炎寺くんは、
料理が得意で、妹想いの、良く出来た少年。
古代ギリシアの理想、端正で規律厳しい「軍神マルス」を彷彿とさせ
男の色香にあふれた・・・実に頼もしい人です。

吹雪くんが、イナズマキャラバンにスカウトされた理由も、
そもそも豪炎寺が、チームを離れて身を隠したから。
当初より吹雪くんは、「豪炎寺のかわりのストライカー」と
みなされ、やがてFWの豪炎寺やアツヤの役割を果たす事に
疲れはて、自分を見失ってしまいました。
いざ豪炎寺に対面すると、ボールを蹴ることさえ出来ず
直球タイプの気迫に圧倒されっぱなし・・・
もう自分はお荷物だ、と悩むのも無理ないことです。

ところがどうして。
豪炎寺は、ほんとに良いやつなので、
吹雪くんが一人でシュートの練習を始めたとき、
「つきあうぜ」と横に並んで走ります。
そして、すぐに吹雪くんの技量を見抜き、一目置きます。
練習を妨げる黒雲と雨、やがて雷鳴が響いて、吹雪くんが
パニックを起こしたときにも、医者の息子は冷静に対応。
「どうした?」
「あの音が・・・」
「しっかりしろ、あれは雪崩の音じゃない」
(ピカッゴロゴロゴロ)
「うわあ~いやだっ!!みんな、いなくなっちゃう」

このとき吹雪くんが叫んだ言葉は、たびたび脅かされながらも、
表面にあらわすまいと無理に微笑みで隠していた、本当の気持ち。
「誰もいなくなったりしない」と、
応じた豪炎寺は、一瞬にして吹雪くんの本音と問題を理解した、
初めての友だったのではないでしょうか。

我にかえった吹雪くんは、寂しさから逃れるためにアツヤを
必要とした、そんな自分の弱さを正直に語ります。
「教えてくれ吹雪、お前の求める完璧とは?」
豪炎寺の問いかけに、
「アツヤとひとつになれば、もっと強くなる」と答える吹雪くん。
「完璧でなくても、オレはサッカー、楽しいぜ?」と豪炎寺。
楽しい・・・楽しめばいいんだ、そう言っていたのは、
かつての吹雪くん自身だった・・・
「だって、お父さんが」
言いかけた吹雪くんは、はっとします。お父さん?
お父さんは、吹雪くんに、そんな無理な完璧さを求めたでしょうか?

・・・すべては、雪崩事故という過去を堰き止めるための
防波堤・・・そのための呪文が「完璧になる」だったのでは・・・

何かに気がつき、呆然とする吹雪くん。豪炎寺は告げます。
「完璧になりたいのなら、必要なものを間違えるな。
 練習は、ひとりでやれ」
立ち去る後ろ姿に、吹雪くんの叫びが(涙)
「もう、ひとりぼっちは、いやだよ」

いや、これは突き放したな~豪炎寺。
それでも吹雪くんが、これだけ赤裸々な本音をさらけ出したのは、
君がそばにいたからだと思う。すごいぞ豪炎寺。



 

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TITLE: (考察)イナズマイレブン・吹雪士郎くん(その3)

CATEGORY: (考察) 吹雪士郎くん DATE: 10/25/2010 00:00:00

(ひき続き、アニメ『脅威の侵略者編』を中心にして)
・・・吹雪くんが、「自分の物語」を語り出したとき、
新しい仲間がそばにいた。それが奇跡の始まりだった・・・

プレーヤーとして大きな挫折を味わった吹雪くん。
でも、その挫折は、彼にとって必要な経験だったかもしれません。
幼い日に味わった雪崩の恐怖と、肉親の喪失体験・・・
その悲しみや寂しさを、
ひとりで抱えてきた吹雪くんの胸には、
ときを経ても、そっくりそのまま恐怖感や無力感・孤独感が
残されていました。封印された真空パックのように。

伝説のストライカーを探すイナズマキャラバンの前に、
初めて現れたとき、吹雪くんは雪に埋もれたお地蔵さんの傍ら、
自身もすっぽり雪をかぶって、通る人もいない峠の一本道に
震えながら立ち尽くしていました。
キャラバンの車に拾ってもらい、「なぜ、こんな場所に」と問われ、
吹雪くんは「自分にとって、特別な場所だから」と説明します。
もしかしたら、
そこは雪崩事故が起きた場所だったのでは・・・と、
容易に想像がつきます。
この出会いの瞬間に、彼は家族の物語を、行きずりのキャラバンの
面々に問われるまま、語り出す機会を得ました。けれども
ふと口をつぐんで瞳を曇らせ、うつむいてしまいます。

吹雪くんの中で、雪崩事故は、まだ語れる過去には
なっていなかったのです。
地元・白恋中学のサッカー部の仲間ですら、吹雪くんが
ひとりで峠に出かけ、雪に埋もれ立っていたことを知りません。

イナズマキャラバンにスカウトされたばかりの頃、
吹雪くんは、「風になろうよ」「楽しめばいいんだ」という
言葉を好んで使いました。
熱血漢ぞろいのチームメイトからは、その気楽な雰囲気を
うさんくさく思われながらも、マイペースを貫き、
メンバーにスノーボードを使って、スピード感覚を身に着けるよう
うながします。意外に「お兄さんなキャラ」なのです。
吹雪くんは、いつも微笑んでいます。
たとえ雪の落ちる音に体がすくみ、恐怖のあまり我を忘れても、
顔を上げたときには、微笑もうとしています。
ですから、彼の味わう恐怖や孤独感は、容易に仲間に伝わりません。

吹雪くんが、風になりたいと願い、スピード感を求めたのも、
サッカーを楽しもうとしたのも、すべて胸に宿る恐怖や孤独を
忘れるためだったのかも。

故郷を離れて、サッカー遠征の旅を重ねる中で
吹雪くんは、仲間と心を通わせようとします。
星空を眺めながら、キャプテンである円堂守に問いかけます。
「ね、イプシロン戦のとき、ぼく、変じゃなかった?」
試合中アツヤの人格が暴走したことから、心が揺れ始めていました。
「そんなことない」と、円堂守は励まします。
「伝説のストライカーの力を、完璧に証明してみせたじゃないか」

「・・・そうだったな。君たちが北海道に来たのは、
ストライカーを探すためだった」
吹雪くんは、それ以上は語らず、
くるっと円堂に背を向けて眠ろうとします・・・でも
弟アツヤのことや自分の本来のポジションがDFだと
いうことまで、ほんとは打ち明けたかったのかも?
後になって、円堂守は、試合中に倒れた吹雪くんの病室で
「あのときオレが気付いていれば、こんなことには・・・」
と、激しく後悔します。
吹雪くんにとって、円堂守は「ぼくのシュートに触れることが
出来たのは君が初めてだ」と一目置くゴールキーパーであり、
帰属チームの「キャプテン」であり、
「話を聞いてほしいと願う相手」でもありました。
対話はすれ違ってしまいましたが、
円堂守は、吹雪くんの事情を知るや、その心情を察し、後に
プレー不能に陥った彼に対して「信じて待つ」姿勢を貫きます。

星空を見上げ、寝ころびながら円堂守に語りかけたとき、
吹雪くんの片手は胸に置かれ、もう片手は円堂の手と
つながろうと無意識に伸ばされていたようでした・・・
円堂は、そんなこと思いもよらず、無造作に両腕を頭の下で組み、
枕にしちゃってますね・・・なんとなく切ない場面。

吹雪くんが「話を聞いてほしい、親しみを感じる相手」は、
他にもいました。ツートップでFWの連携プレーを組んだ
染岡くん・・・染岡くんは、当初、新参者の吹雪士郎を
激しく拒絶しましたが、むしろ気が合うようになり
(士郎にとっては弟を思わせる存在、アツヤにとっては良い相棒)
互いに認め合います。認め合った矢先に、けれど染岡くんは、
試合中に負傷し、治療のため涙をのんでチームから離脱。
吹雪士郎に、エースストライカーを託します・・・
熱い男の友情、で良い話なのですが、吹雪くんの大きな負担に。
ストライカーは士郎ではなく、弟のアツヤだった・・・
吹雪くんは、プレー出来ない自分の現状を詫びるため
染岡くんの病院を見舞い、逆に励まされます。
「オレのケガなんざ、お前の苦しみに比べたら、なんでもねえよ」
吹雪くんの全ての仮面がはがれ落ち、素直になれたのは
この言葉を聞いた瞬間から、ではなかったでしょうか・・・




 

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TITLE: (考察)イナズマイレブン・吹雪士郎くん(その2)

CATEGORY: (考察) 吹雪士郎くん DATE: 10/25/2010 12:40:26

(アニメ『脅威の侵略者編』を中心にして)
主なポイントは「二重人格」であること・・・

亡きアツヤ(FW)の分まで
強く完璧なプレーヤーであることを自らに課し、
本来のポジション(DF)を超えて、
試合の責任を一人で負ってしまう吹雪くん。
攻守にわたる高い能力とセンスの反面、
「トリッキーなプレーヤー」「あの力は諸刃の剣」と
監督達に評されることもありました。

また、日頃から「ストライカーとしての凄味を感じさせない」
「軟弱」「気が小さい」(←吹雪士郎の人格)
試合態度から「自分勝手なプレーに走る」(←アツヤの人格)
と、チームメイトからも、戸惑いの目で見られがち。
吹雪くんが持っている、優しさや一生懸命さなど
本当の良さは、なかなか伝わっていかない残念な展開に・・・

対戦相手が強敵となり、自らのプレイが通用しなくなると、
しだいに吹雪くんは心のバランスを崩し、
「ぼくはアツヤじゃない、吹雪士郎だ」
「でも皆が期待しているのは、DFの士郎じゃない。
必要なのは、アツヤの力だ。DFのぼくにシュートが打てるのか」
と、自分を追いつめる方向に、一直線・・・

とうとう、シュートが決められない絶望感と無力感から、
「士郎としても必要ない。アツヤとしても必要ない。
それじゃオレは(ぼくは)いったい何なんだ~!?」
と胸に叫んだまま、プレーが出来ないほど混乱してしまい、
ボールに触れることさえ怖がるように。

チームメイトは、途中から吹雪くんの異変に気がつき、
監督を問いつめて、彼の過去・現在を悩ませている問題を知ります。
「どうして監督は、吹雪くんの抱えている問題を知りながら
イナズマキャラバンに参加させたんですか?」
「試合に勝てさえすれば、吹雪くんがどうなってもいいんですか?」

「それでも私は、彼を使い続けます」(監督)
「ここには、彼が壁を乗り越えて成長するために、必要なものが
あるからです」「・・・仲間、か」(監督とOB)

試合の得点を、吹雪くんのシュートに頼っていたチームメイト達。
それぞれの課題を見つけ、もっと強いチームに生まれ変わろうとする
仲間の練習風景を、吹雪くんは、膝をかかえて見守ります。
「ぼくは、このチームのお荷物になっちゃったね・・・」
と寂しそうにつぶやきながら、でも彼はチームにとどまり続けます。

彼は共にサッカーをする仲間を、ずっと
心の奥底では、とても大切にしてきたのに、
その想いを、士郎とアツヤという人格の二重性のために、
ストレートに表現できない「つかみどころのない存在」でした。
サッカーが怖くても、チームを見つめる・・・
その痛々しい無言の姿からは、けれど
柔和な笑顔(士郎)も、強気なオレ様(アツヤ)も消えた、
素顔の吹雪くんの、正直な感情が伝わってくるようで、
チームメイトは彼の復活を信じ、しずかに見守り続けます。

ここで「二重人格ゆえの葛藤・挫折の物語」の奥に、
「家族と一瞬にして死別した少年の、深い心の傷」が、
テーマとして横たわっていることに、気がつきました。
(・・・「凍てついた心象風景を持つ少年」が、
「サッカー仲間をとおし奇跡的な回復をとげる物語」として、
躍動感あふれるストーリーを描き切った点に、
作品の底抜けに明るい向日性・・・大きな魅力が)

ところで、吹雪くんが、
亡き弟アツヤと共に戦い続けようとした、一見不可解な態度には、
それなりの理由がありました。
雪崩事故の直前、サッカーの試合からの帰宅途中、
士郎とアツヤが、互いのポジションをめぐって幼い口論を展開し、
運転中のお父さんが、ニッコリ振り向いて諭すのです。
「それじゃ、二人がそろったら完璧だな」

お父さんもお母さんも、理知的で優しそう・・・きっと
恵まれた家庭でのびのび育った兄弟なんだろうな~
けれど直後に、場面は暗転、両親の悲鳴と襲いかかる雪崩。
凝視する士郎の幼い瞳に、すべては暗く呑み込まれ・・・

たった一人、車から投げ出され、生還した士郎の中では、
雪崩と自動車事故の記憶が凍てついたまま。
枝や屋根から雪が落ちる音や、雷鳴に反応して、
ひどく怯えます。
苛烈をきわめるサッカー試合の合間にも、事故の記憶が
鮮明によみがえって、人知れず吹雪くんを脅かしたのでした。

おそらく、吹雪くんの二重人格とは、
この「凍てついた記憶のフラッシュバック」を食い止めるために、
築かれた防波堤・・・

「アツヤと一緒に完璧な存在になる。もっと強くなる。
強くなって、みんなを助ける。それが自分が今、ここにいる
みんなが必要としてくれる、存在理由なんだ」

その裏返しの、本当の心の叫び・・・

「ぼくが弱いから、完璧になれない。ぼくが弱いから
何一つ役に役に立たない。あの自動車事故のときも・・・
ぼくが無力だから、誰も助けられなかった」
「もう、ひとりぼっちは、いやだよ」

完璧なプレーヤーを懸命に演じていた吹雪くんにとって、
自分の無力さに直面することは、
事故の記憶と正面から向き合う、とても辛い時間だったのです。




 

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TITLE: ロンリーウルフ

CATEGORY: ポエム&童話 DATE: 10/21/2010 01:31:12

きみが 悲しいのは
帰る群れを 喪ったから
でも いま
きみが 寂しいのは
自分が狼だって 気づかずにいるから

忘れてしまったの?
飼いならされても 
犬にはなれない きみは
野生の狼なのに

きみが 速いのは
追いつかれたくない
思い出が つらすぎるから
でも いま
きみが 強いのは
きみ自身の ほんとの強さなんだ

忘れないでいて
みんなが求めるのは
みんなが知っているのは
悲しみを知る きみの
その優しさ だっていうこと

いちばん前を 駆ける
灰色のたてがみに
エールをおくるよ
ロンリーウルフに 乾杯!



 

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TITLE: (考察)吹雪士郎くん

CATEGORY: (考察) 吹雪士郎くん DATE: 10/20/2010 00:00:00

吹雪士郎(ふぶきしろう)・・・

イナズマイレブン2『脅威の侵略者』
 (ゲーム・アニメ・マンガにわたるメディア・ミックス作品)
の準主役。エースストライカー。

北海道の小さな中学校のサッカー部キャプテン。中学2年生。

・ロンリーウルフ(一匹狼)
  群れをはぐれた(家族を雪崩で喪っている)
  亡くなった弟の人格を生きている(二重人格)
   ↓
  双児神=英雄の特徴(片われの死)
             例.ギルガメシュとエンキドゥ

・英雄タイプのAC(アダルトチャイルド)
  ACスマイル
   (心の中の葛藤や不安を隠す。ニコッ)
  完璧主義
  自己肯定感が低い
  個人プレー
  一か十かの白黒思考
  人の話が聞けない
   (雪崩によって一瞬に家族を喪い、
    寂しくてどうにかなりそうだったとき、
    死んだはずの弟アツヤの声が聞こえてきた。
    アツヤとひとつになって完璧になる。
    完璧になって強い自分になる)

  役に立ちたい
  見捨てられ不安
   (チームで必要とされているのは、アツヤの得点能力。
    シュートを決めなくては、ぼくがここにいる意味がない)
   (ぼくが完璧じゃないから、何の役にも立たない。
    ぼくが完璧じゃないから、誰ひとり助けられない。
    もっと強くならなくちゃ)

・恐怖のトラウマ
  一瞬でひとりぼっちになった過去のフラッシュバック。
   (いやだ~!!みんないなくなっちゃう)

・仲間
  ひとりぼっちではなかった。
  ボールに皆の想いがこもっていた。
   (キャプテンは「信じて待つ」と言ってくれた)
   (聞こえる、ボールから皆の声が・・・)
   (完璧になるというのは、アツヤとひとつになることではなく
    チームの皆とひとつになることだったんだ)
           ↓
  仲間とのサッカープレイを通した意識の変容により、
  不協和音を奏でていた「アツヤ」の人格が、
  本来の「士郎」の人格に融合し、
  毅然としながらも伸び伸びとしたプレーヤーへと一歩成長する。

ストーリーを追って、アニメを視聴してみたのですが、
吹雪士郎くんの物語をはじめ、
各キャラクターの描き方が深く、
「イナズマイレブン」という作品が、
多くの子ども達の支持を得た理由も納得できます。

まだアニメ全話を観ていないのですが・・・
っていうか、紙の上に印刷されたテキストがないと
作品を客観的に見直すことが出来ないので
まったくの印象評・・・アニメ等の映像作品の分析ってのは、
文学作品の読解よりも難しいんだろうナ、きっと。

アニメでの吹雪士郎くんの描き方を観て
「いっそのこと児童文学よりも文学的だ」
「ファンタジーだ」「神話の英雄誕生だ」
「それでいて、まったく楽しい子ども向け作品だ」
と、敬服してしまいました・・・アンド

単純に「こういうキャラ」には弱い・・・昔から。
吹雪くんのルックスが
どこか石ノ森作品を思わせて「ツボにはまってしまった」。
マフラーといい、毛先のはねた髪型といい、背番号の9といい・・・
(もっというなら、
「士郎」=石ノ森章太郎キャラ、「アツヤ」=永井豪キャラ)

まいったなや・・・(笑)



 

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TITLE: 二重星

CATEGORY: ポエム&童話 DATE: 10/17/2010 08:53:16

君の瞳の優しさは
微笑みゆえに
ではなくて
誰かの不在ゆえ

と 気づいたのに
きっぱり拒まれるより
いっそう重い 君の引力

どこにも行けない
足もとにもつれた影を
ひとつ またひとつ
受け止め 蹴り飛ばし 解き放つ以外
どんな未来も見つけられず

影法師ひとつ
重力以上に踏みしめている
アンバランスな
臆病さ加減にあきれはてる

気が遠くなる無限のピース
雪原のジグソー・パズル
白い闇に 目印のない星座を
書き込むのは誰?

さあ、地図だ
純白のフィールドだ
影法師から 両足を持ち上げて
見知らぬ方角へ
君は 歩き始める

足元にボールがひとつ
そのゴールは無限にひろがる



 

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TITLE: 真珠色の光源

CATEGORY: ポエム&童話 DATE: 10/17/2010 08:36:36

いくたび手さぐりしても
届かぬ答えが 

かいま見える あの
真珠色の光源から
砕け散ってくる 
届かぬ問いかけ そのままに
結晶が落ちる

思考のカーテンに隠された
風の 白い溜め息
少年の影はいつも ここに
地上に落ちる

あわく
結晶の影が 重なり落ちる




 

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TITLE: 雪の日に

CATEGORY: ポエム&童話 DATE: 10/17/2010 08:25:02

新しい街への旅立ちも
ただひとりの相棒の死も
そういえば 雪の降る日に訪れた。

くらい淵から くるくるまわる
あかるくかるく 光るかけら

ちいさな手いっぱいすくった
つめたくいたい 雪だるまの頬のまるみ
マフラーまいて駆けていったグラウンド
おもいでは空のかけら
山の道にひとひら ふたひら

少年は白い斜面を きゅっきゅと踏んで
凍てついた球を 蹴る。そうして
北風と一緒にすべりおりて
見知らぬ谷間に いざなわれる。




 

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TITLE: 秋祭りと少年マンガ

CATEGORY: アニメ・まんが雑記 DATE: 10/16/2010 13:04:24

ここ一、二週間ほど、10月3連休の秋祭りをピークとして
アウトドア(?)派の生活を・・・
お祭りのご芳志(寄付)集めに、赤いハッピを着て
二日がかりで町内を歩いたり。
子ども達の太鼓打ちの練習に(秋の夜の風物詩♪)つきそったり。
子ども神輿を、赤白ピンクの紙のお花で飾ったり。
子ども祭りの、おでん屋さんの売り子をしたり。

幸い天気にも恵まれ、無事にお祭りが出来てホッとしています。
10・11月は行事が多く、あっという間に日々が過ぎてゆく・・・

そんな楽しい季節なのですが、文章を書く為には辛い生活モード。

毎年「あ~また秋祭りか~」と軽くへこむ(疲れるのやだよ~
逃げられない役員、お仕事いっぱい、色んな人が色んなこと言う)
            ↓
やるしかない、案ずるより産むが易しだ~!! の心境に至る
            ↓
やってみると意外と楽しかったり(どっかでキャラチェンジしてる)
            ↓
くたくたになって祭りが去る(忙しくて手つかずだった用事が残る)
            ↓
ギャース! 細かいこと考えられネ~ヨど~したら元の感覚に戻れる?
(時間ができても手がつかない状態に、呆然愕然)
            ↓
マンガを読む、アニメを見る、寝る、ピアノを弾く(逃避と遊戯)
            ↓
ジタバタへこんだ後、いつもの内向的なキャラに戻る
            ↓
読書と文筆を志す&図書ボランティアのおばさんの時間がやって来る

自分のチャンネルを切り替えるために、日頃から
大量の空白(頭をカラッポにして楽しむ)時間を必要としています。
奇麗な旋律のCDとか、ロック調のJポップとか、少年マンガとか。
「少年マンガが好き」
と言うと、たいていの人に
「え~意外! イメージと違う」
と驚かれるのですが、
日常の潤滑油として、少年マンガの無い生活は、
やっぱり考えられない・・・子どもみたいな趣味だとしても。
(創作の師である二上先生は、いつも
「あなたの場合、何も考えずに書くぐらいで丁度いい。
 もっと面白いストーリーで、子どもをワクワクさせなさい」
 って、 アドバイスして下さってました・・・
 いっそ、それが出来たらいいんですけど・・・ね)

今年の秋は、「イナズマイレブン」にお世話になっています・・・
吹雪士郎くん、カッケー!!! 
エターナル・ブリザード、もうサイコ~さ☆
12月のアニメ映画公開が待ち遠しいです。(^。^)/☆





 

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TITLE: マルス

CATEGORY: ポエム&童話 DATE: 10/09/2010 11:29:43

はるか深海より輝きのぼる
オリハルコンの呼び声。
あかがねの剣先が示すのは
ここにある平安よりも
なお胸焦がす新世界への道。

禁断の実はあまく赤い
地上にしたたる紅玉を集めて
錆びついた鎧を飾れ。
沈まぬ黄金郷をさがし出して
愚か者らの王国の名を
聖なる古文書に
新たな筆跡で強引に書き記せ。

黒きイブのエデンより旅立ち幾万年。
冒険者の都アトランティスは
黄昏の水底ふかく
遠い動乱の夢を紡いで眠る。

いま未知なる灯火をかかげ
愚か者らの名を刻んだ箱船が
荒涼と凍てた
朱の惑星の原野めざし
旅立ちのときを迎えている。

深淵より昇る炎の竜
その悪名たかき伝説の御叫びを
いささか調子外れに
誇らかに繰り返し
星の船が出航する。




 

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TITLE: ロキ

CATEGORY: ポエム&童話 DATE: 10/08/2010 13:22:52

目的には手段を選ばず・・・
おしまいには神々全てを敵にまわして
死者の爪で作った船の舵をとり
バルハラ宮殿へ攻め込んだってかまわない。
大蛇に狼、魔女に亡者
天変地異を待ち望む連中が
こぞって後についてくる。

何もかも、黄昏までのたわむれだ。
真剣な眼差しは
瞳が映す終末を、ひととき忘れる方便に過ぎない。

神々は、母なる一族を踏みつけて巨人と呼び
王を継ぐはずだった私を、邪神とあざける。

同胞は、黄泉の地図を手渡され、この地を去った。
生き延びて未来がつかめるならば
神々を自称する、あの侵略者どもとダンスして
嘘もつく、とびきりの笑顔だって売るさ。

黄金の枝を折りとり、未来の王を討ったならば
今は邪神と呼ばれる私こそ、大地の王だ。

虚しい玉座は、神々の滅びを望んでいる。
失われたものに焦がれ
取り残された者たちの涙に身を焼かれ、もがく。
荒れ果てよ、揺れ動け、血に濡れた大地。

私を縛る、不当な戒めの縄を解く者はいないか。
終末に駆けだす狼の、鎖を解くものはいないか。





 

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TITLE:

CATEGORY: ポエム&童話 DATE: 10/08/2010 00:37:35

うろこを破って喰い込む氷の牙は
惑わしの毒を 血管に流し込む
彼はあてどなく 回転する
自らの尾をくわえたまま

遠い昔 彼は太陽の使いだった
今 闇の生き物に堕ちている

荒れ地で 深い眠りにつく以前
彼は唄った ガラガラ声で
尾を振り立てて
でたらめな弾き語り
通り過ぎる街角で
さびた弔いの鐘を鳴らした

彼はもう長いこと 目を閉じて
母なる言葉の意味を見失い
故郷の泉 黄金の実のなる樹を
慕っている

彼の名は 楽園を追われた精霊
翼の消え失せた 竜




 

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TITLE: 金の枝が紡ぐ夢

CATEGORY: 神話雑記 DATE: 10/06/2010 13:28:14

 

「本格的な古典に挑戦!」と
枕元に置いて、夜な夜なページをパラパラめくり、
そのたび「夢の国行き・眠り舟」への
乗船切符、と化している本
    ↓
『初版 金枝篇』(上)(下)
 (j.G.フレイザー著 吉川信 訳 
   ちくま学芸文庫 2003.1.8、2003.2.10 各第1刷発行)

本の帯につけられた言葉・・・
「社会人類学最大の古典 蒐集と分類に捧げられた圧倒的な情熱
 膨大な註を含む初版完訳。全二巻」(上)

「『金枝』の秘密/王殺しの謎
 ネミの森から始まった人類史のオデッセイ
  いよいよ大団円。全二巻完結」(下)  

(@_@)/~☆

あまりにも有名過ぎて、手をつけていない・・・という本が
過去からの宿題として幾冊も積まれ、その中のデッカイ懸案事項。
この秋には読む・・・なんとしてでも読破する!
たとえ幾度、眠りの海底に沈没してでも。

やっぱりファンタジーだのメルヘンだのフェアリーテイルだの
神話だの色々いうからには、一応これだけは読んどくべき、
っていう本・・・(今まで読んでなかった訳です、ハイ)

そして・・・まず結論部と、解説から先に読んでしまいました。

「金の枝とは。古代ヨーロッパを覆い、神格化されていた
オークの森、そのオークの樹に寄生するヤドリギのこと。
オークの樹の精霊は、光明神であり(木の摩擦熱で炎が生じる)、
季節の実りをもたらす太陽の運行を象徴し、穀物神でもあった。
オークの樹の生命は、
冬でも青々としているヤドリギの中に護られ、宿っている。」

「北欧神話の光明神バルデルは、巨人族ロキの策略にかかり、
ヤドリギで作った矢によって、命を落とした。
バルデルは、オークの樹の精霊であり、
ヤドリギが、バルデルに致命傷を与えることが出来たのは、
逆説的に、ヤドリギに光明神の命が封印されていたことを示す」

「黄金のヤドリギは、豊穣のしるしとなる」

「樹霊・穀物霊の化身である王。
その象徴である木や人形などを
いけにえに捧げ火葬したり、
穢れを水で浄化したりする儀式は、
光明神・豊穣神に、新しい生命力を与え、
年ごとの実りを願う、古代からの普遍的な心情に由来する」

おおまかに書くと、こんな内容・・・らしい。
しかしながら、詳細を読むことに意義があるので
精進した~い・・・眠らずに♪

こういう古典を読むと、神話的な解釈のカンがついて、
たとえば日本の『古事記』などを読むときにも、
とっても役立つのです・・・


わらべ唄や昔話には
一粒ずつ黄金のしずくが
眠っている

詩が 黄金のかがり火を
呼び覚ます

イエイツがケルトを呼び覚ましたように
和物語にも まだ眠っている「うた」がある・・・

とんと昔
今は昔
あったとさ

語り伝えの国から来て
夢のいざないのまま旅し
たそがれの果て目指す宝船

とっぺんはらり
どんとはらえ
あったとさ





 

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TITLE: 小鳥

CATEGORY: ポエム&童話 DATE: 10/04/2010 15:01:11

水色の尾羽根は 土の中
楽しげな歌声も 土の中
一度も飛び立てなかった  窓の外

その身は
草の根のベッドに 抱かれ
その魂は
風に乗って舞う日を 夢見る

ある日 大地の殻をやぶり
見えないもう一羽の 水色の鳥と
鳴きかわしながら 旅立っていった

風の中の小鳥
その翼は 空になる




 

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TITLE: 妖精の騎馬行

CATEGORY: 読書メモ DATE: 10/03/2010 12:42:00

今朝は、一面の霧が信夫山を白く包み、冷たい空気が
秋の深まりを教えてくれました。
いつしか霧は晴れ、明るい青空が・・・

『ケルト妖精学』(井村君江 著 ちくま学芸文庫
           2003.11.10 第1刷発行)
によれば、(p.94~95)

イギリスでは、「ハロウィン前日(10月30日)の
夜から暁にかけ、一年に一度、自分の丘をひとめぐりする
妖精の騎馬行(フェアリーライド)」の伝説があるそうです。

アーサー王が、カドベリーの丘のまわりを、大勢の従者と一緒に
馬に乗ってひとめぐり・・・
(そういえば、日本でも
平家の亡霊である武者や姫君の行列、の伝説が)

この「フェアリーライド」伝説を下敷きに書かれた詩↓(同書p.388)

  『騎士』 (W.ド・ラ・メア作)

 丘を越えていく
 騎士の音を聞いた
 月はけざやかに照り
 夜は静かだった
 騎士の兜は銀で
 その顔は蒼く
 騎士の乗る馬は
 象牙だった

  『ベン・バルベンの下』 (W.B.イエイツ)(同書p.91~95)
    (略)
 大理石はいらない。きまり文句もいらない。
 ちかくから切り出した石灰岩に、
 彼の求めによって次の言葉が刻まれる。
   生も、死も、
   冷たく見ながせ、
   騎馬の男よ、行け!

ケルト的世界観では、人の魂は輪廻転生し、
永遠の生(死)をめぐり続けるのだ、とか・・・
イエイツの詩(上記)には、こんなフレーズも。

  ベッドで死のうと
  ライフル銃で撃ち殺されようと同じこと、
  恐ろしいといっても、たかだか、
  一時のあいだ親しい者と別れるだけだ。

荒涼とした無常観の中に、生への情熱を秘めた詩句。
古代ヨーロッパ文明(ケルト)を再評価し、自ら創作し、
アイルランド文芸復興運動の旗手であったイエイツですが、
その墓碑に刻まれた言葉が

  生も、死も、
  冷たく見ながせ、
  騎馬の男よ、行け!

という、死の前年に記した自身の詩の、ラスト三行、というのも
「最後のロマン主義者」を名乗った詩人にふさわしく感じます。

「妖精の騎馬行」は、丘をめぐり、やがて夜空を駆けていきます。
詩の墓標・・・
光瀬龍がSF作品の中で描いたモチーフ、「星の墓標」にも
どこか似通った感性であるような・・・

ケルトの伝承には、男たちの不思議な航海が描かれ、
「異界への冒険譚」が、大きなテーマの一つとなっています。
(異界は、女神の島で、移り変わりの止んだ永遠の時の中にある)
「星の海の航海者」を描く、光瀬龍のSFとは
元来、通底する部分が、とても多いのかもしれません。



 

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TITLE: たそがれに還る (光瀬 龍 作)

CATEGORY: 読書メモ DATE: 10/01/2010 20:56:17

涼しく冴えた空気、虫の声に癒されながら
SFの文庫本を読みふける・・・
金色の至福の時間。

読み始めたら止まらない・・・

『たそがれに還る』
(光瀬龍 作  ハヤカワ文庫 
        昭和48年3月15日 発行  昭和60年4月15日 9刷)

この作品が発表されたのは、1964年。
描かれてから、まもなく半世紀が過ぎようとしているのですが・・・
30世紀から40世紀に渡る人類の未来、「太陽系開拓史」を
ずっしりと構築して、少しも色褪せていません。

初めて読んだのは、10代の終わり頃。
クールな文体、壮絶な主人公の生き様に圧倒され、
その哀切な読後感とあいまって
忘れがたい一冊ではあったものの、
読み返すこともなく、ダンボール箱にひっそりと・・・

今回、ガンダム00劇場版のストーリーを、
ネットで拾い読みするうちに、
「発想そのものが、きちんとSF」
「エンターティメントというより、むしろ
舞台を宇宙に設けたハードボイルド文学」である
光瀬龍の、「硬質な宇宙」が、
なんともいえず懐かしくなって、再読しました。

(小説で手元にあるのは、『たそがれに還る』のみ、
 あとは萩尾望都コミカライズの、『百億の昼と千億の夜』を
 持っているだけ・・・熱心な読者とはいえないのですが)

「スーパー・コンピュータ」とは書かず
「巨大電子頭脳」と書く辺りが、
昭和の時代を感じさせたり・・・けれども
一からきちんと文章によって構築された世界は、
古びていないどころか
哀愁や無常感をにじませ、その透徹した詩情に
現代の若手作家にはない、厳しさを感じました。

大きな力で日常が破壊される光景を、目の当たりにした
作者の体験・・・空襲で燃え落ちる街の記憶、が
その原点に横たわる「無常感」なのだ、と
巻末の作品解説にあり、なるほどそうだったのか・・・ 

と、若い頃には読み落としていた、
レクイエム的な詩情の深さに対して、
あらためて心を打たれました。

廃墟、炎上、死・・・そうした光景が繰り返し描かれる中、
懸命に活路を見出そうと、死力をふりしぼる人々の群像劇。
そして、宇宙から迫る未知の脅威に対して、
人類の未来を託された、孤独な開拓者たち。
「リーダー」という宿命を背負った者の
人知れぬ、魂の軌跡・・・

主人公が密かに想いを寄せる女性が、
宇宙空間に設置した探査装置の「鍵(かぎ)」
だったという、悲恋物語。そして
人々の願いと努力も虚しく、
稼働と同時に爆発、宇宙のガス星雲となって
消滅する探査装置・・・

「星の墓標」によって刻まれた宇宙史。
SF的なロマンの香りという言葉だけでは言い尽くせない、
「人類の明日への祈り」がにじむ・・・切ない結末です。

そして不思議なことに、
どんなに絶望が深くても、なお
未来に立ち向かう勇気が伝わる結末、でもあったのでした・・・

(本書は入手が難しい絶版作品のようですので、
 ネタバレ的な内容も、あえて書いてみました m(_ _)m )




 

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