こちら、ドワーフ・プラネット ( Yahoo!ブログより )
ファンタジーや神話、子どもの本について等、
のんびり書き記したブログのアーカイブです。
月曜から日曜まで、『日常』は、太陽系の7惑星。
そのはざまに浮かぶ、『矮惑星』のような、
夢見がちな時間の記録として。
ホームページ「黎明のほのかな翼」
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MONTHLY: 2013/04
TITLE: オモカゲ草
CATEGORY: シノブくん雑記
DATE: 04/29/2013 12:57:53
オモカゲ山の オモカゲ草は カガミ草と いいまする いいまする
ユメミガサキの カガミ石に 咲きまする 咲きまする
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TITLE: 四月の雨(5)
CATEGORY: 創作「オモカゲ山のシノブくん」
DATE: 04/11/2013 14:14:56
四月の雨(5)
どれほどのときが、たったのか。 雨だれの音に目をあけると、わたしは、イグサのしきものの上、うすがけのふとんをかけられ、やしろのゆかにねかされていた。 「白ギツネの子か……どこからまよいこんだのか」 「森のケモノのにおいがまるでしない、ふしぎな子だね」 アズマさんとシノブくんとが話しているのは、どうやらわたしのことだ。 おきあがると、ふたりがそろってこちらを見た。 やしろのあけはなした戸のむこうは、宵やみの森だ。雨がふりつづけている。 シノブくんが、にっこり声をかけてくれた。 「おや、目がさめたね」 「たあいもない。花見酒によい、キツネの耳やらシッポやら出して、ねむりこけておったぞ」 アズマさんが、カラスのようなくちばしでカラカラわらった。 「おぬし、どこから来た。名は、なんという?」 たずねられて、わたしはこまった。 「わたしは……わたしの名は、イスルギ」 そこから先のことばが、みつからない。 戸口にたち、雨もようの夜空をみあげた。 なんども見聞きし、よく知っている気がするのに、ここは、はじめておとずれる見しらぬ世界だった。 「よくふる雨だね。ゆうべは、たくさんの流れ星がおちたのだけど。今夜は、星も見えない」 シノブくんがためいきをつくと、アズマさんがこたえた。 「まぁ、そういうなよ。四月の雨は、五月の花をじゅんびする、と昔からいうのだぞ」 四月の雨、五月の花。 そのとき、宵やみをながめるわたしの目から、ポロンとひとつぶ、しずくがおちた。 (ハレヤカナ、ウタゲヲ、アリガトウ……) あの雨つぶだった。 つめたい天からの旅のなかば、いちどでいい、花の宴を見たかったのだろう。のぞみのかなった雨つぶは、森の土にすいこまれていった。 「おぬし、泣いているのか」 アズマさんがいった。 「いえ、そうではなく……」 わたしは、目をこすった。雨のしずくは、地にかえった。 けれど、わたしはどこから来て、どこへ行くはずだったのだろう。 夜の天地のはざまで…… シノブくんが、わたしのかたにポン、と手のひらをおいた。 「はじめて見たとき、思ったよ。もしかして、この子は……どこかとおくから来た、大切なお客さんなのかもしれないな……って」
とある四月の雨の夜、わたしは、見しらぬ森で、シノブくんのやしろのお客になった。
( ―四月の雨― 2013.4.11)
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TITLE: 四月の雨(4)
CATEGORY: 創作「オモカゲ山のシノブくん」
DATE: 04/10/2013 17:38:05
四月の雨(4)
うすむらさきのリボンをつけたおじょうさんが、花びらのかたちのコップに、のみものをそそいだ。 「スミレのおさけは、いかが?」 すすめられて、ひとくちすすると、あまくてやさしい味がする。 年輪をきざんだテーブルに、うすい花びらがまいおりてきた。 羽ごろもをまとった女の人が、ながいかみをなびかせ、ふわりと宙にうかんでいる。 シノブくんがしずかに笛を吹くと、女の人は、サクラの小枝を手に、たおやかに舞いはじめた。 「サクラの花は、すぐにちってしまうからな。このひとときの舞いのために、宴をひらいたのだ」 カラス天狗のアズマさんが、ムスッとつぶやくと、笛の音にあわせ、よくとおる声でうたいあげた。
「あまつかぜ くものかよひじ ふきとぢよ をとめのすがた しばしとどめむ」
さいてすぐちる、まいおりてすぐ天にかえってしまう、天女のようなサクラの花。 風に花びらがながれる、雨のようにながれる。 (ヤット、アエタ……) わたしのむねのおくで、あのちいさな声がささやいた。 (ハナニ、アエタ……) わたしの目をとおして、いま、このけしきをながめているのは、ひとつぶの雨のしずくなのかもしれない。 むねのおくが、スミレ色にそまる……あまくやさしく、あたたかなスミレ色に。 わたしは、じぶんのとがった耳や、ながいシッポが、ピョコンととびだすのをぼんやり感じ、切り株のテーブルにつっぷすと、そのままふかいねむりにおちた。
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TITLE: 四月の雨(3)
CATEGORY: 創作「オモカゲ山のシノブくん」
DATE: 04/09/2013 00:31:28
四月の雨(3)
足をふみいれると、やしろの中のはずのそこは、いちめんの野原だった。 草の原に花がさき、チョウがまっている。みあげても空はなく、ただ、金のひかりがすべてをみたして、あたたかい。 ぬれそぼったわたしの手足のさきまで、あかりがともったように、あたたまってくる。 目をまるくしているわたしを、男の子がふりかえった。 「おどろかせてしまったね。ぼくの名は、シノブ。こっちの大きいのは、カラス天狗のアズマ」 羽うちわをもった大男は、わたしを横目でムスッとにらんでいる。 きいろいボウシの女の子が、かけよってきた。そして、 「おきゃくさま、おきゃくさま」 と、わたしの手をとり、みどりのスカートをくるくるゆらして、はしゃぎまわる。 「あ、このとてもげんきな子は、タンポポさん」 そういうシノブくんに、女の子は、はずむようにねだった。 「シノブくん、笛。はやく笛をふいて」 シノブくんは、横笛を口にあてると、野を歩きながら、ゆっくりとふきならした。 笛の音にさそわれたのか、きいろいボウシの女の子たちが、つぎつぎにかけてきて、シノブくんのまわりで、ゆるく輪になった。 シノブくんが歩くにつれ、笛の音と、わらいさざめく声が、右にいったり左にいったり。大きくなったり小さくなったり。 みどりのスカートが、くるくるゆれる。手に手にもった、ツクシのバトンをくるくるまわす。きいろいボウシの子らの輪おどりは、シノブくんやアズマさん、わたしをとりまき、めぐりつづけた。 いつしかわたしは、笛の音をおいかけて、いちめんのタンポポが風にゆれる、金のひかりの道を、歩いていたのだった。
笛の音が止み、シノブくんがたちどまった。 タンポポさんたちが、いっせいにわたしの手をとり、大きなテーブルの席にひっぱっていった。 大きな大きな切り株のテーブルを、小さな切り株のイスがかこんでいる。 金の野原のまんなかにある、そのふしぎな席に、わたしはすわった。
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TITLE: 四月の雨(2)
CATEGORY: 創作「オモカゲ山のシノブくん」
DATE: 04/07/2013 02:41:34
四月の雨(2)
かすかな笛の音、わらいさざめく声が、どこからかながれてきた。 右からきこえたかと思うと、こんどは左から。大きくなったり、小さくなったり。そのひびきがふしぎで、わたしは、くらくらとめまいをおぼえた。 ぼうっとしながらクモの巣のめじるしをさがしていると、とおくにぽつんと、あかりが見えた。 木々のむこう、こがね色のまたたきが、まるで「こちらにおいで」とよんでいるようだ。 わたしは、みぶるいをひとつして、そのあかりをめざした。 笛の音やわらい声が、だんだんと大きくなった。 おいしげる木々がぽっかりひらけると、そこは、こじんまりした広場だった。
石の鳥居のおく、ふるぼけた「やしろ」が、雨にぬれている。そのあけはなした戸から、こがね色のあかりが、こぼれていた。 あたたかそうだ…… わたしは、すいよせられるように、やしろの石段をのぼった。 やしろの柱と柱のあいだには、ふとい縄がはりわたしてあった。 その縄の下をくぐったとき、笛の音がぴたりと止み、わたしはたちどまった。 「だれだ、われらの宴にふみいる者は」 われがねのような声が、あたりをビリビリふるわせ、わたしは、みをすくめた。
戸のむこうから、ぬっと顔をつきだしたのは、大きなくちばし、するどい目……しろい着物に、くろいエボシをかぶった大男だった。 大男は、手にした羽うちわを、ぴしりとわたしに向けてきた。 「おかしいなぁ、ちゃんと結界をはったはずなのに」 大男のわきからヒョイとのぞいたのは、笛をかた手に小首をかしげる、男の子だった。 「あれ、みなれない子だね。ごめん、きょうは花の宴で、人の子は……」 すまなさそうに、男の子は、わたしをながめた。
「人の子!はやく、もときた道をかえれ」 カラスのようなくちばしをクワッとあけて、大男が、わたしをにらんだ。あいかわらず、羽うちわをかまえている。 「でないと、ふきとばしてしまうぞ」 おおきく羽うちわがひるがえった。 「ちょっとまって、アズマ」 男の子が、戸のむこうからとびだして、大男のうでをおさえた。 「なにをする、シノブ」 大男が、目をむいた。 「あ、いや。この子は、もしかして……」 「もしかして……なんだ?シノブ」 大男は、いぶかしげに羽うちわをおろした。 「うん、アズマ。この子は、もしかして……」 シノブとよばれた男の子は、うなずいて、わたしにわらいかけた。 「ずぶぬれだから、ほっとくと、カゼをひきそうだと思ってさ」
おいで、とさしだされた男の子の手にひかれ、やしろの戸をくぐると、こがね色のあかりが、わたしをつつんだ。
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TITLE: お絵描きしながら
CATEGORY: シノブくん雑記
DATE: 04/04/2013 17:51:48
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TITLE: 四月の雨(試作)
CATEGORY: 創作「オモカゲ山のシノブくん」
DATE: 04/04/2013 17:40:20
四月の雨
ごうごうとうなる風が、体をおしながす。耳がちぎれそうなほど、つめたい天の風だ。矢のようにはしる星くずたちにまじり、わたしは、ひとすじの流れ星となって、地にふりそそいだ。
めざめると、暗い穴の中だった。 しめったコケのにおいで、鼻がむずむずする。くしゃん、とくしゃみをして、頭をひとふりすると、体がぬれていることに気づいた。 どうやらわたしは、まっさかさまに落ちたいきおいで、しっかりと土に穴をあけ、地面にもぐってしまったらしい。 井戸のそこからよじのぼるように、もがきながら、地上に顔をだした。くもった空から、かぞえきれない水のつぶが、わたしに落ちてくる。 ここは、どこだろう? さむい……
空をみあげたわたしの目、そのかたほうに、ポトンとひとつぶ、しずくが入った。 そのしずくは、しんじゅ色のまくで、わたしに見える世界をふさいだ。ツンとすんだ、でもやわらかないたみが、体をながれた。 「ハ・ナ・ニ……」 え? 「ハナニ、アイタイ」 わたしのではない小さな声が、むねのおくでささやいた。 「ウ・タ・ゲ・ニ……」 はっとして、むねをおさえると、また小さな声がした。 「ウタゲニ、イッテミタイ」 「きみ、だれ?」
たずねて耳をすますと、ふりしきる水の音にまじって、その小さな声はこたえた。 「シガツノ……アメ」 四月の雨。
まぶたのおくに、しんじゅ色のまくがすいこまれ、ふいに世界は色をとりもどした。ツンとつめたい、やわらかな色だ。 「ハナにあうため、ウタゲにいきたい?」 とほうにくれた。 わたしには、なんのあてもなかった。ちょっとぼんやりしてから、あてはなくても、でかけてみることにした。 雨にうたれ、ゆっくりと、わたしは歩きだした。
あたまのてっぺんから、ゆびのさきまで、しずくがポタポタすべりおちていく。 森の木々は、やっぱりてっぺんから枝のさきまで雨にぬれながら、とてもしずかに立っている。 ほんとうに、ここはどこだろう? 草むらで、クモがしずかに、じぶんの巣にいる。 雨つぶをちりばめた、うずまきもようの巣の上に。 葉かげのクモの巣で、きらきらふるえる雨つぶが、なんだか → というかたちに、うきあがって見えた。 ぬかるんだ小道のわきの草むらには、あちらにもクモの巣、こちらにもクモの巣。 ひとつずつのクモの巣に、それぞれ雨つぶのえがく → が、まるで道あんないでもするように、ゆれて光る。 いったいどこまでつづくのだろう。 たどった先のクモの巣にうかぶ、雨つぶのかたちは、小道をはずれた森のおくをしめす、やじるしだった。
くらくて、みしらぬ森。 でも、もともとわたしは、まいごだった。 しっている場所なんて、どこにもない。 「アイタイ……」 むねのおく、またあの声がきこえた。 わたしのではない……でも、わたしのなかの声。
雨の道を、わたしは森のおくへと歩きつづけた。シダの葉かげのクモの巣づたい、雨つぶのやじるしをたどって。
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- こちら、ドワーフ・プラネット -
2010年8月1日 Yahoo!Geocities ジオログ開設
2014年6月1日 Yahoo!ブログに移設
2019年3月18日 The-wings-at-dark-dawn.com に移設
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