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TITLE: 『スキャット Scat』 (カール・ハイアセン著)

CATEGORY: 読書メモ DATE: 01/27/2011 13:21:40
『スキャット Scat』

(カール・ハイアセン・著 千葉茂樹・訳 
  理論社  2010.8 第1刷発行)

アメリカの現代児童文学。フロリダを舞台に、
絶滅危惧種のフロリダ・パンサーの赤ちゃんをめぐっての騒動を、
少年ニック(14歳)を主人公に描いた、群像劇。

校外学習の日に、湿原で起きた火事。そこで行方不明になったのは、
魔女と恐れられている生物の教師、スターチ先生。放火の容疑が、
クラス一番の問題児・ドゥエーンにかけられて・・・

謎の湿原火事と、スターチ先生の失踪をつなぐ手がかりを求め、
ニックとガールフレンドのマータは、いつしか
フロリダ・パンサー保護をめぐる攻防戦の渦中へと・・・
ドゥエーンは、ほんとに粗暴なだけの非行少年なの?
スターチ先生は、今どこで何をしているの?
ギンギンに熱い自然愛護活動家VS石油会社の腹黒い陰謀、
さあ、正義の女神は、誰に微笑む?

謎解きと冒険を楽しみながらも、現代のアメリカ社会を
鏡のように映し出す描写や設定が、随所で目を引きます。
ニックの父は、イラク派兵で右腕を失って帰国療養。
ニックの母は、刑務所の看守。
堅実な家族にも、戦争や監獄社会(アメリカは貧困対策を
福祉から厳罰主義に切り替え、刑務所を産業化してきた国)
の影響が、くっきり・・・

善良で腰の低い雇われ校長に、変わり者の教師陣。
スクールバス通学、少女でも銃を扱うお国柄。
家庭崩壊もなんのその、道楽にふける富裕層・・・

軽快なテンポの文体で、気楽に読み進むうちに
次第に重層的な物語が骨格をあらわして、
無責任な大人・自然への乱開発に怒りを暴発させていた
少年ドゥエーンがクローズ・アップされてきます。
自然のみを友としていた非行少年が、
ニックという仲間や、スターチ先生という師を得て、
人の絆への信頼を取り戻し、未来への希望をつかむ物語には
読者を魅了するエネルギーがあふれています。

作者のカール・ハイアセンは、フロリダっ子。ジャーナリストから
ミステリー作家へと転身した経歴の持ち主だそうです。
子ども向けの読み物としては、『HOOT』(2002)、
『FLUSH』(2005)で、アメリカの子ども達の人気を獲得。
本作『スキャット Scat』(2009)は、堂々3作目の児童文学だとか。



 

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