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こちら、ドワーフ・プラネット ( Yahoo!ブログより )
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DAILY:
TITLE: 妖精の騎馬行
CATEGORY: 読書メモ
DATE: 10/03/2010 12:42:00
今朝は、一面の霧が信夫山を白く包み、冷たい空気が 秋の深まりを教えてくれました。 いつしか霧は晴れ、明るい青空が・・・
『ケルト妖精学』(井村君江 著 ちくま学芸文庫 2003.11.10 第1刷発行) によれば、(p.94~95)
イギリスでは、「ハロウィン前日(10月30日)の 夜から暁にかけ、一年に一度、自分の丘をひとめぐりする 妖精の騎馬行(フェアリーライド)」の伝説があるそうです。
アーサー王が、カドベリーの丘のまわりを、大勢の従者と一緒に 馬に乗ってひとめぐり・・・ (そういえば、日本でも 平家の亡霊である武者や姫君の行列、の伝説が)
この「フェアリーライド」伝説を下敷きに書かれた詩↓(同書p.388)
『騎士』 (W.ド・ラ・メア作)
丘を越えていく 騎士の音を聞いた 月はけざやかに照り 夜は静かだった 騎士の兜は銀で その顔は蒼く 騎士の乗る馬は 象牙だった
『ベン・バルベンの下』 (W.B.イエイツ)(同書p.91~95) (略) 大理石はいらない。きまり文句もいらない。 ちかくから切り出した石灰岩に、 彼の求めによって次の言葉が刻まれる。 生も、死も、 冷たく見ながせ、 騎馬の男よ、行け!
ケルト的世界観では、人の魂は輪廻転生し、 永遠の生(死)をめぐり続けるのだ、とか・・・ イエイツの詩(上記)には、こんなフレーズも。
ベッドで死のうと ライフル銃で撃ち殺されようと同じこと、 恐ろしいといっても、たかだか、 一時のあいだ親しい者と別れるだけだ。
荒涼とした無常観の中に、生への情熱を秘めた詩句。 古代ヨーロッパ文明(ケルト)を再評価し、自ら創作し、 アイルランド文芸復興運動の旗手であったイエイツですが、 その墓碑に刻まれた言葉が
生も、死も、 冷たく見ながせ、 騎馬の男よ、行け!
という、死の前年に記した自身の詩の、ラスト三行、というのも 「最後のロマン主義者」を名乗った詩人にふさわしく感じます。
「妖精の騎馬行」は、丘をめぐり、やがて夜空を駆けていきます。 詩の墓標・・・ 光瀬龍がSF作品の中で描いたモチーフ、「星の墓標」にも どこか似通った感性であるような・・・
ケルトの伝承には、男たちの不思議な航海が描かれ、 「異界への冒険譚」が、大きなテーマの一つとなっています。 (異界は、女神の島で、移り変わりの止んだ永遠の時の中にある) 「星の海の航海者」を描く、光瀬龍のSFとは 元来、通底する部分が、とても多いのかもしれません。
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