童 話 2010年 〜

 
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− 水晶のハート −

 

 

 

青い月明かり、

雪の原。

小人が金槌で、

ツララや

雪の花の細工物。

トンカチ、トンカチ・・・

 

おや、

なんでしょう、

聞きなれない調べが、

リンクル・コロン。

だれでしょう、

女の子が泣いています。

 

雪の上に落ちている、

フタの開いた木の小箱。

「君はだれ?」

小人が、たずねます。

「私は、バレリーナ。でも、もう踊れない」

女の子が、怪我した足を指さして、いいました。

「たいへんだ、転んだのかい?」

「いいえ、空から落ちてきたの」

雪に埋もれた木箱から、悲しい音が、

リンクル・コロン。

 

「私、あの台座で踊る、バレリーナだったの」

木箱の中で、空っぽの台座が、リンクル・コロン。

小人は、じっと考えていましたが、やがて

調べに合わせて、トンカチ、トンカチ・・・

 

「なにを作っているの?」

と、ふしぎそうなバレリーナ。

「とっておきの水晶で、とってもいいもの、さ!」

小人が、ニコッ。

リンクル・コロン・・・トンカチ、トンカチ。

金槌の音が、休まず気持ちよくひびくので、

いつしかバレリーナも、つられてニコッ。

 

青い月明かり、雪の原。

長い夜は過ぎ去って、朝日がのぼると、

どこからか、鈴の音がシャンシャン・・・

眠そうな目をした白ひげのおじいさんが、

トナカイのソリで、通りかかりました。

 

「おや、こんなところに・・・

配り忘れてしまった落とし物」

おじいさんは、トナカイのソリを停め、

雪の上から白い木箱をひろいました。

「はて・・・わしが作ったのは、

こんなオルゴールじゃったかな?」

おじいさんは、赤い帽子をゆらして、

首をかしげました。

すると木箱が、リンクル・コロン。

おじいさんは、にっこり。

「これは、よい音色だ。我が家の子ども達への、

おみやげにしよう」

トナカイのソリは、空へと舞いあがりました。

 

深い森の、一軒家。

窓辺にかざられた、オルゴールがひとつ。

白いドレスの女の子と、

金槌かついだ元気な男の子とが、

仲良くうなずきあっています。

二人の間の台座の上で、リンクル・コロン。

水晶のハートが、くるくると、

調べに合わせて、めぐっています。

 

小人は、生まれて初めてハートの形を作ったので、

その水晶、ちょっとゴツゴツしていますけれど、ね・・・

 

       (2011/1/12)

 

 

 

 

 

ブログ「こちら、ドワーフ・プラネット」より

  

©Tomoe Nakamura 2011

 

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