アクエリアス (1)
光と闇との
黙示録の行間
天の河が氾濫した
銀翼が塔を砕き
十字路に
行き場のない
風が荒ぶ
広場は鉄条網で
閉ざされ
星雲の衝突 太陽の消滅
旅人は闇の水底に ゆっくりと
身を横たえて 星々の淵を仰ぎ見る
泥につながれた 翼を持たぬ魚
土の塔で なおも物語を紡ぎ続ける
星座を観測した者達の末裔
よみがえれ 水瓶を捧げる大地の女神
肥沃な恵みの洪水を
とぎれめなく空と大地にめぐる雨を
病み疲れた白い都の 頭上いっぱい
押し寄せる銀河
降りしきる流星雨のように
その腕に抱く水瓶から 無限に注げ
(2010/8/16)
アクエリアス (2)
年経た暦や
古びた戸籍には
いまだ記されぬ声が
広場に満ちた
約束の星が
どの嬰児の
額に輝くのか
生まれ来る光の芽を
つみとるために
身構えていた
冥府の番犬たちすら
追いつけぬ素早さで
星は 四方八方に輝いた
嬰児を奪われまいと
地を這って守る
男女らの 日焼けした額で
隷属の道を敷かれていた
年若き子らの 暗い胸で
星は いちどきに輝いた
約束の星は ただひとつではなかった
沈黙の星々は 光を失っていたのではなく
輝くそのときを ひたすら待っていたのだ
よみがえれ 水瓶を捧げる大地の女神
肥沃な恵みの洪水を
とぎれめなく空と大地にめぐる雨を
病み乾いた王の都 その頭上いっぱい
押し寄せる銀河
降りしきる流星雨のように
ゆたかな腕に抱く水瓶から 無限に注げ
(2011/2/15)
ブログ「こちら、ドワーフ・プラネット」より
©Tomoe Nakamura 2010
|